倒産や解雇など、会社都合で退職しなければいけない状況になってしまうことが起こってしまった時に、退職後にかかる費用はできるだけ抑えたいですよね。
会社都合での退職しても、退職後には何かの公的保険には入らないといけません。
その時に損をしない選択をするために、国民健康保険料が大きく減額となる特例制度を、自治体で国民健康保険税の賦課計算を担当したことのあるファイナンシャルプランナーのSが解説していきます。
結論
✅会社都合で離職した場合は国民健康保険料が安くなる
✅高額療養費の区分判定も減額適用後の所得で算定される
✅対象になるかは雇用保険受給者証をチェック
✅退職時65歳以上の場合は対象外
✅特例の対象期間は離職から最大で2年度
この結論をもとに順番に解説していきますね。
会社都合退職の場合は国民健康保険料が減額される
国民健康保険には、「非自発的失業者の特例」(以下「特例」といいます)という保険料の減額制度が設けられています。
これは、解雇や倒産など会社都合で離職しなければいけなくなった場合に、手続きをすることで国民健康保険料が減額になるものです。
この特例に該当する場合は、国民健康保険に加入するほうが、社会保険を任意継続するよりも有利になるケースが多くなります。
え⁉️
国民健康保険料が安くなる方法があるんだ〜❣️
いざ自分が会社都合退職することになってしまった時のために、知っておきたい制度だね。
国民健康保険料の計算は、
✅所得に応じて計算される所得割
✅固定資産税額に応じて計算される資産割
✅加入者1人あたりにかかる均等割
✅1世帯にかかる平等割
によって計算されます。
自治体によって、この4つのうち2〜4つが保険料の計算に使用されますが、非自発的失業者の特例で減額になる可能性があるのは、「所得割」「均等割」「平等割」の3つです。
では、保険料はどのくらい減額になるのでしょうか。
まず、直接的に減額になるのは「所得割」です。
所得割を計算するもとになる前年の所得のうち、特例の対象になる人の「給与所得」が100分の30で計算されます。
例えば、給与所得が300万円の人は、給与所得が90万円とみなして計算されることになります。
えっ⁉️
こんなに保険料額が違うんだ❗️
今回は保険料率を10%で計算しているけど、保険料率がもっと高い自治体なら、もっと差が出るかもしれないね。
次に、関節的に減額される可能性があるのは、「均等割」と「平等割」です。
この2つは、世帯主➕国保加入者の所得に応じて、2割〜7割の減額があります。
この減額を判定するにあたって、特例の対象になる人の給与所得が、100分の30で計算されるので、特例適用後の世帯所得が減額対象の所得以下になれば、「均等割」と「平等割」も減額される可能性があるんです。
高額療養費の限度額区分にも影響がある
公的な健康保険では、医療費が大きくなりすぎないように、月毎にかかる医療費に限度額が設定されています。
この限度額を決める要素には、世帯の所得も含まれていて、特例を受けることができれば、特例適用後の所得で限度額の区分を判定することになります。
すべての人が特例の恩恵を受けられるとは限りませんが、もし毎月の医療費負担の限度額が下がれば、ありがたいですよね。
毎月かかる医療費の上限が下がる可能性があるんだね〜❣️
課税所得が特例適用後で判定されるんだよ。
世帯の状況によっては限度額額が変わらないかもしれないけど、もし限度額が下がるなら、安心できるよね。
雇用保険被保険者離職票を確認
会社都合で国民健康保険料が減額されることはわかりましたが、何を確認すれば特例の対象になるかわかるのでしょうか。
まず確認する書類としては、失業保険の受給手続きを行うためにハローワークから発行される「雇用保険被保険者離職票」を確認しましょう。
離職票の「14.離職理由」に次のコードが入っていることを確認しましょう。
離職理由コード:11・12・21・22・31・32のいずれか
または
離職理由コード:23・33・34のいずれか
これらに該当し、失業保険を受ける場合には、特例を受けられる可能性が出てきます。
このコードが離職票に書いてたらいいんじゃないの?
ほかにも条件があるから注意しようね。
離職時の年齢をチェック
非自発的失業者の特例には、年齢制限があります。
離職時の年齢が65歳以上の場合、この特例は対象にはなりません。
ただし、65歳未満の場合でも、特例受給者資格者証が交付されている人も同様に、この特例は対象とならないので注意しましょう。
65歳以上だと対象外なんだ…
そうだね。
残念なことに65歳以上の人は特例を受けられないんだ。
特例の対象期間は最大2年度
この特例の対象期間は、離職日の翌日の属する月から翌年度末までとなります。
例えば、令和5年6月30日に会社都合で離職した場合は、翌年度末の令和7年3月31日までの最大1年9か月間、この特例を受けられます。
また、一度国民健康保険でこの特例を受けている人が、再就職して社会保険に入り、特例対象期間中にまた国民健康保険に加入した場合は、社会保険に加入するタイミングで一度軽減が終了しますが、国民健康保険に再加入してからの残りの特例対象期間についても、この特例を受けることができます。
一度国民健康保険を抜けても、期間内に国民健康保険に戻れば特例を受けられるんだね!
再就職で新たに雇用保険の受給資格が発生すると再判定になるから注意だよ。
ただし、再就職によって、新たに雇用保険の受給資格が生じた場合には、新たな離職票で特例を受けられるか再判定となるので注意が必要です。
特例を受けるには申請が必要
非自発的失業者の特例を受けるには、お住まいの自治体へ手続きする必要があります。
まずは自治体の窓口へ行き、退職に関する情報を伝えて国民健康保険の保険料や給付、特例について話を聞きましょう。
特例に該当しそうであれば、特例を受ける手続きに必要な書類や手続きの流れ、特例が該当する場合の保険料額などを教えてもらえます。
国民健康保険の加入手続きには、社会保険の資格喪失連絡票を持参します。
手続きの印鑑廃止は進んでいますが、自治体によっては印鑑が必要な場合があるので、ハンコは一緒に持っていくのが無難です。
また、マイナンバーカードの保険証利用の関係で、マイナンバーカードが必要になる可能性があるので、一緒に持っていきましょう。
国民健康保険加入手続きで持っていくもの
✅資格喪失連絡票
✅判子(ハンコ)
✅マイナンバーカード
✅ハローワークから交付されている場合は「離職票」
これらを持っていけば大丈夫なの?
自治体によって、必要なものが変わる可能性があるから、一度電話で問い合わせるといいかもね。
離職票が交付されていない場合は、交付されてから特例の手続きをすることになるよ。
ハローワークから交付される離職票が手元にある場合には、特例の申請も合わせて手続きすると、何度も役所へ行かなくてもよくなりますよ。
ただ、同時に手続きを行うのは、タイミングが良くないと難しいので、少なくとも国民健康保険の加入手続きと特例の申請手続きの2回は役所で手続きをすることになると思っていたほうがいいですね。
国民健康保険料の支払いに注意しよう
国民健康保険の加入手続きと特例申請の手続きが別の日になってしまった場合は、国民健康保険料の支払いに注意が必要です。
国民健康保険料の賦課計算は、おおむね月末か月初めに行っている自治体が多いです。
そのタイミングのあとに特例申請の手続きをした場合、特例が反映されるタイミングが翌月にズレてしまい、1回目の支払いが特例が適用されていない金額となってしまう可能性があります。
自治体によっては、賦課計算後であっても、一定期間までは納付書を差し替えしてくれる可能性があるので、可能であれば特例適用後の納付書に差し替えしてもらいましょう。
差し替えができない場合は、翌月に新たな納付書が届くので、2回目以降は新しく届く納付書で支払うようにしましょう。
これってどういうこと?
手続きのタイミングしだいで、特例が反映されるまでは、通常の計算での保険料額での支払いになる可能性があるということだよ。
あらかじめ窓口で、いつまでにどのくらいずつ支払いしていくことになるかを確認しておきたいね。
自治体の窓口で、どういうふうに保険料の支払いをすることになるかをあらかじめ確認しておくと、あとから慌てなくて済むってことだね❗️
最後に
S先生ありがとう!
会社都合で退職した場合に、国民健康保険がお得になることがわかったよ!
さっそくみんなに伝えてくるよ!
そうと決まれば「猪突猛進!」
会社都合での退職後に、損をしないように気をつけたいね。
いかがだったでしょうか?
非自発的失業者の特例が適用になる場合は、社会保険を任意継続する場合よりも有利になるケースが多くなります。
会社都合で急に退職することになると、退職後のいろいろな支払いが苦しくなってしまいます。
そんなことが起こらないに越したことはありませんが、いざという時に少しでも損をしない選択ができるように、国民健康保険の非自発的失業者の特例は覚えておきたいですね。
この記事があなたのお役に立ちますように!
それではまた。
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