妊娠や出産は人生の中でも、とても大きなイベントです。
その際にかかる費用は、多くの家庭にとって大きな負担になります。
しかし、妊娠や出産にかかる医療費の一部は医療費控除の対象となるので、確定申告することで税金の負担を減らすることができるかもしれません。
妊娠や出産に関して、どんな医療費が医療費控除の対象となるかを解説します。
✅妊娠・出産のどんな費用が医療費控除の対象になるのか
✅医療費控除の対象にならない費用は?
✅給付金がおりたら、医療費から差し引かないといけない?
医療費控除ってなに?
医療費控除は、年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得税の控除を受けられる制度です。
確定申告することで、医療費の一部を所得から差し引いて計算することができます。
医療費控除の条件は?
一般的には、10万円を超える医療費がかかった場合に、医療費控除を受けられると聞くことが多いかもしれません。
実際には、所得によって、医療費控除の対象となる基準金額が変わります。

医療費が10万円を超えたら、医療費控除の対象って聞いたけど違うの?

所得によって、医療費控除の対象にできる金額が変わるんだよ
所得が200万円未満の場合
所得の5%を超えた金額が医療費控除の対象
所得が200万円以上の場合
10万円を超えた金額
医療費が数百万円かかるような場合でも、医療費控除の上限額は、200万円となっていることにも注意しましょう。
生計が同じ家族の医療費も対象になる
医療費控除の対象になる医療費は、あなた自身が支払った医療だけが対象になると思っているかもしれません。
しかし、一定の要件を満たしていれば、家族の医療費もあわせて医療費控除を受けることができます。
出産した奥様の医療費だけではなく、ご主人にかかった医療費や、生計が一緒のほかの家族の医療費を合わせて医療費控除を受けることができます。

妊娠や出産にかかった医療費を、旦那さんの医療費控除に混ぜて申告してもいいってことかな

妊娠・出産費用を奥さんが支払っても、旦那さんの医療費に混ぜて医療費控除ができるよ
保険金などがおりた場合は、支払った医療費から差し引く必要がある
高額な医療費がかかった場合や、医療保険などをかけている場合に、高額療養費や保険金などがおりることがあります。
そのときには、対象となった医療費から補てんされた金額を差し引いて、医療費控除を申告する必要があります。
出産の場合には、後述する出産育児一時金もかかった医療費から差し引く対象になります。

保険とかがおりたら、かかった医療費から引かないといけないんだね〜

医療費を補てんするものは、出産にかかった医療費からは引かないといけないね
医療費控除の対象になる妊娠・出産費用
出産の際には、いろいろな場面で医療費がかかります。
しかし、医療費控除の対象となるものと、対象にならないものがあります。
どのような医療費が対象なのか、対象外なのかを見ていきましょう。
医療費控除の対象になる費用 | 備 考 |
---|---|
妊婦検診 | 出産後の検診も対象になるものがある |
不妊症の治療費や人工授精の費用 | |
急な陣痛で利用したタクシー代 | 急を要する場合や公共交通機関を利用できない場合が対象 |
出産にかかる分べん費や入院費 | 出産育児一時金を差し引いた残りが対象 |
療養のために頼んだ家政婦の費用 | 療養の世話のための費用は対象 |
妊婦検診
妊婦検診は、医師による診療の対価として、医療費控除の対象になります。
しかし、多くの自治体では、妊婦検診の助成をしています。
助成があっても足りず、手出しをしたり、助成を受けられる回数を超えて受信したりした場合は、医療費控除に入れ忘れないようにしましょう。
自治体の助成を超える自己負担があったら医療費控除の対象
また、出産後の検診についても、健康診断の対価にすぎないものを除き、医療費控除の対象になります。

出産後の検診も対象になるんだね〜

単なる健康診断的なものは、対象にならないから気をつけてね
不妊症の治療費や人工授精の費用
不妊治療や人工授精の医療費についても、医療費控除の対象になります。
自治体によっては、不妊治療や人工授精の費用を助成しているところがあります。
その場合には、自己負担した費用から、助成金を差し引いた金額が、医療費控除の対象になります。

不妊治療や人工授精の費用も対象になるんだね〜

自治体などからの助成をもらった場合は、その金額分は対象にならないから注意だね
急な陣痛で利用したタクシー代
タクシー代については、基本的には医療費控除の対象にはなりません。
しかし、病状からみて急を要する場合や、バスや電車などの公共交通機関を利用できない状況であれば、タクシー代も医療費控除の対象になります。
また、医療費控除の対象になるタクシー代に、高速道路料金が含まれている場合は、その高速道路料金部分も医療費控除の対象になります。

タクシー代って、医療費控除の対象になるんだ〜

やむを得ない事情があれば対象になるけど、なんでもかんでも対象になるわけじゃないんよ
出産にかかる分べん費や入院費
出産の際には、分べん費や入院費がかかってきます。
これらの費用は、医療費控除の対象になります。
しかし、後述する出産育児一時金など、医療費を補てんする金額を差し引く必要があるので注意しましょう。

出産育児一時金も、医療費から引かないといけないんだね〜

出産育児一時金や補てん金を超える部分が、医療費控除の対象になるよ
療養のために頼んだ家政婦の費用
出産後に無理ができず、家政婦をお願いすることがあるかもしれません。
療養上のお世話をするために、家政婦をお願いした場合には、その費用は医療費控除の対象になります。
療養の世話のための家政婦代は、医療費控除の対象
しかし、単純に家事や子どもの世話をお願いした場合には、医療費控除の対象にはならないので注意しましょう。

家政婦代も医療費控除の対象になるんだね〜

利用内容によるから、全部が対象になるわけじゃないよ
医療費控除対象外の妊娠・出産費用
妊娠や出産にかかる費用の中には、医療費控除対象外の費用があります。
間違えて医療費控除の金額にまぜないように注意しましょう。
医療費控除の対象外の費用 | 備 考 |
---|---|
無痛分べん講座の受講費用 | |
母体血を用いた出生前遺伝学的検査の費用 | この検査自体が治療につながらないため対象外 |
出産のために実家へ帰省する交通費 | 実家から病院へ通うための公共交通機関の交通費は対象 |
無痛分べん講座の受講費用
無痛分べん講座は、妊婦さんの不安を和らげたり、講座の内容を身につけて、安産につながることが期待できます。
しかし、講座の受講費用は、診療等の対価として支払うものではありません。
また、医師からの診療等を受けるために直接必要な費用ではないため、医療費控除の対象にはなりません。

無痛分べん講座って、役に立つのに医療費控除の対象じゃないんだ〜

残念だけど、役に立つかどうかが基準ではないんだ
母体血を用いた出生前遺伝学的検査の費用
出征前の遺伝学的検査は、胎児の染色体の数的異常を調べるものです。
人間ドックや健康診断のように、検査によって病気が見つかり、治療をすることになったときは、治療に先立って行われた診察とみなされ医療費控除の対象になります。
しかし、この検査によって異常が見つかったとしても、この検査自体が治療にはつながらないため、治療に先立って行われた診察とはならず、医療費控除の対象にはなりません。

検査すれば治療につながりそうだけど、これは対象外なんだね〜

この検査で異常が見つかっても、直接治療にはつながらないということなんだろうね
出産のために実家へ帰省する交通費
医療費控除の対象になる交通費は、診療や治療などを受けるための交通費のうち、その診療を問うを受けるために直接必要なもので、通常必要な人的サービスの提供の対価です。
実家へ帰省する費用は、要件に当てはまらないため、医療費控除の対象にはなりません。
ただ、直接病院へ通うために支払った公共交通機関などは、医療費控除の対象になります。

里帰り出産とか多そうだけど、実家に帰る費用は対象にならないんだね

病院などに直接通うための交通費が、医療費控除の対象になるんだね
医療費から差し引かないといけないもの
医療費控除の対象になる医療費だとしても、健康保険や医療保険などから補てんされた金額がある場合は、補てんされた分は医療費控除の対象にはなりません。
かかった医療費から差し引かなければいけない補てん金を確認してみましょう。
出産育児一時金・家族出産育児一時金
出産育児一時金は、出産に関わる費用の経済的負担を軽減するために、加入している健康保険から支給される給付金です。
給付される金額は、50万円(一部の医療機関での分べんの場合は48万8千円)です。
出産にかかった費用(妊婦検診費用、出産に伴う入院費、交通費、入院中の食事代、医師・助産師に支払った費用)から差し引いて確定申告する必要があります。
出産にかかる医療費から出産育児一時金を引いた残りが医療費控除の対象
ただし、出産育児一時金よりも出産費用が少なくても、出産以外の医療費から差し引く必要はないので注意してくださいね。
また、差し引く対象となる医療費が年をまたぐ場合には、それぞれの年の対象費用の額に応じて按分して医療費から差し引きます。

確定申告のタイミングで、出産育児一時金を差し引く医療費の金額が確定してないときはどうするんだろ〜?

いったん見込み額で申告して、見込みと違う金額になった場合は、あとから修正申告や更正の請求をすることになるね
高額療養費
1か月の間にかかる医療費の上限額は、会社員であれば標準報酬月額、個人事業主であれば、前年の所得によって決まっています。
この上限額を超えた医療費を支払った場合には、高額療養費として給付されます。
高額療養費として支給された金額は、高額療養費の対象となった医療費から差し引く必要があります。
入院や手術があったときは、高額療養費が給付されていないか要確認
高額療養費として給付される場合は、2、3か月後に振り込まれることが多いので、記載漏れがないように気をつけたいですね。
また、限度額認定証を病院へ提出している場合など、あらかじめ限度額を超えないように処理されて、高額療養費としてあとから給付されない場合は、あらためて医療費から差し引く必要はありませんよ。

入院や手術のときは、あらかじめ限度額認定証を病院に出しておけば楽なのかな〜

限度額認定証をあらかじめ出しておいたほうが、医療費控除の際に悩まなくてすむね
民間保険からの給付金
生命保険や医療保険など、保険会社と契約している保険から、入院や手術、通院などの給付金が出ることがあります。
民間保険からの給付があった場合には、保険給付の対象となった医療費から、給付金の金額を差し引く必要があります。
もしも、高額療養費などの給付と、民間保険の給付の対象の医療費が重なっている場合には、かかった医療費を上限に、給付された金額を差し引く必要があります。

民間医療保険から保険金がおりたら、それも引かないといけないんだね〜

実際に手出しをした医療費の金額が、医療費控除の対象だから仕方がないね
任意の互助組織から医療費の補てんを目的として支払いを受ける給付金
会社の福利厚生制度や労働組合の互助会などの医療費助成制度で、医療費に対する給付金が下りるような場合は、医療費から給付金の金額を差し引く必要があります。
もし、会社の互助会などの制度で、給付金が出るような場合には、あらかじめチェックしておきたいですね。

どういうものが対象になるの?

従業員が病気や怪我で医療費が発生したとき、勤務先の互助会から支給される医療費の補てん金が対象になるね
まとめ
妊娠・出産は、とても大きなイベントです。
ただ、出産までには、さまざまな費用がかかってきます。
妊娠や出産にかかる医療費は、医療費控除の対象になるものがあるので、確定申告をして税金の負担を負担を軽減していきましょう。

S先生ありがとう!
妊娠・出産で医療費控除の対象になるもの、ならないものがよくわかったよ!
さっそく、子どもが産まれた友達に教えてくるよ!
そうと決まれば「猪突猛進!」

妊娠・出産でかかった費用で、医療費控除の対象になるものをしっかり把握して、税金の負担を減らしていきましょうね
コメント