会社を退職して前年に所得がなかったり、所得税が課税されない収入しかなかったからと、所得の申告なんて関係ないと、あなたは思っていませんか?
所得税の確定申告は必要がなくても、住民税の申告をしないと国民健康保険料の減額を受けられなかったり、国や自治体などからの補助制度などを受けられず、損をしてしまうかもしれませんよ。
あなたが損をしてしまわないように、所得がなくても住民税の申告が必要なケースについて、自治体税務を担当した経験のあるファイナンシャルプランナーのSが解説していきます。
相談
S先生!
友達から税金の申告について聞かれたんだけど、うまく答えてあげられなかったから教えてほしいの!
そのお友達からは何を聞かれたの?
その友達は、一昨年の年末に会社を退職して、去年は雇用保険の失業給付と貯金の取り崩しで生活していたらしいの!
だから、昨年は税金が課税される所得が無いから、税金の申告はしなくて良いんだよね?って聞かれたの!
そうなんだね。
たしかに課税の対象になる所得が無ければ、所得税の申告は必要ないけど、場合によっては住民税の申告が必要になる可能性があるんだよ。
えっ⁉︎
そうなの⁉︎
住民税の申告をしないことで損をしてしまう場合があるから、どんな人が所得が無くても住民税の申告をしないといけないかを解説していくね。
結論
1年を通して無収入だった人や雇用保険の失業給付、傷病手当金、遺族年金、障害年金などの非課税の収入しかない人のうち、誰の扶養にも入っていない人や他自治体に住む親族の扶養に入っている人は、所得税の申告が必要なくても住民税の申告は必要です。
住民税の申告をしないことで、国民健康保険料などの減額制度を受けられなかったり、非課税世帯などに対する補助制度などを受けられず損をしてしまうかもしれません。
あなたが、これは自分に当てはまるかもと思ったら、お住まいの自治体へ確認して、必要であれば住民税の申告をするようにしましょう。
どんな人が申告が必要なの?
次の条件のいずれかに該当して、かつ誰の税金上の扶養にも入っていない人、他自治体の親族の扶養に入っている人が対象になります。
①:1年を通して収入がない
②:非課税の収入しか収入がない
※雇用保険の失業給付、傷病手当金、遺族年金、障害年金など
非課税の収入なのになんで申告が必要になるの?
非課税の収入は、自治体の税務担当部署に何も情報が来ないんだ。
だから、非課税の収入しかないよっていう申告が必要になるんだよ。
同じように、収入がないっていうことも何の情報も来ないから、収入がないよっていう申告が必要なんだ。
税金上の扶養っていうのがよくわからないんだけど、健康保険の扶養に入らないとダメってこと?
税金上の扶養と健康保険の扶養は別物だから関係ないんだ。
税金上の扶養に入るには、親族の人が年末調整や確定申告であなたを扶養にします、っていう手続きをしないといけないんだよ。
健康保険の扶養と税金上の扶養は別物です。
健康保険の扶養に入っていないから税金上の扶養に入れない訳ではないですし、健康保険の扶養に入っているから税金上の扶養に入っているとも限りません。
あなたが税金上の扶養に入っているかは、まずはご家族に確認してみましょう。
ご家族の源泉徴収票や確定申告書の控えの扶養の欄に、あなたの名前が記載されていれば、あなたはご家族の扶養に入っています。
ご家族に確認しても、よくわからないようであれば、お住まいの自治体へ住民税の申告をしておくと良いでしょう。
よく分からなかったら、住民税の申告をしておくほうが良いってことだね。
そうだね。
わからないからと申告しないよりは、わからないからこそ申告をしておくと良いね。
S先生!
なんで他自治体の親族の扶養に入ってると申告が必要なの?
誰々を扶養にしているという情報は、扶養に入れている側の人が住んでいる自治体にしかいかないんだ。
扶養に入っている人の住んでいる自治体には、なんの情報も行かないから申告しないといけないんだよ。
申告をしないとデメリットはあるの?
申告しないデメリットは、人によって違いますが、おおむね次のようなデメリットがあります。
- 非課税証明書・所得証明書を取得できない
- 国民健康保険料の軽減措置を受けることができない
- 国や自治体などからの給付金や補助制度を受けられない場合がある
証明書を取れないことはデメリットになるの?
非課税証明書などは、公的機関への手続きなどで使うことが多いからね。
未申告のままだと、手続きを進めることができないんだ。
役所や金融機関、学校などへの手続きで、課税(非課税)証明書や所得証明書などを提出しなければいけない場合があります。
未申告の場合だと証明書が発行できないので、手続きが遅れてしまう可能性があるので注意が必要です。
S先生!
国民健康保険料の軽減措置なに?
国民健康保険料は、世帯の所得に応じて、均等割や平等割と言われる部分が2〜7割減額されるんだ。
本来なら軽減を受けられる世帯でも、未申告だと軽減対象外にされる可能性があるんだよ。
そうなんだ〜⁉︎
金額的には大きいの?
国保加入者の数によるけど、軽減を受けられるかどうかで、保険料が年間で数万円〜十数万円違うこともあるんだよ。
ちゃんと申告しておかないと、大きな金額が請求されて困ってしまうよね。
国民健康保険料には、世帯の所得状況に応じて保険料が減額される制度があります。
未申告者がいる場合、自治体によりますが減額が適用されない可能性が高いです。
あとからであっても申告をすれば世帯の所得に応じて減額が適用されますが、申告のタイミングによっては直近の支払い分の金額が変更されない場合もあるので、保険料の支払いが大変になるかもしれません。
申告していないだけで給付金がもらえなかったり、補助制度を使えなかったりするの?
申告をしていないと、非課税ではなく未申告者という扱いになってしまうから、対象から外れてしまうこともあるんだよ。
ただ、遅れてでも申告すれば大丈夫なケースもあるから、有利な制度を受けるために可能な限り早めに申告するようにしたいね。
給付金や補助制度の対象者へお知らせをする場合に、未申告者だと制度の対象になるか判断できずにお知らせの対象から漏れてしまう可能性があります。
また、申請期限ギリギリに未申告に気づいた場合だと、申告をするまでに期限を過ぎてしまう可能性もあるので気をつけたいですね。
いつまでに住民税申告をしないといけないの?
住民税申告の期限は、確定申告と同じで3月15日までとなっていますが、3月15日を過ぎたとしても自治体の窓口で住民税申告は受付けしてもらえます。
だからと言って、いつまでも申告をしないと前述したようなデメリットが発生する可能性があります。
ほかの制度に影響が出ないようにするには、その年度の住民税が確定する前に申告する必要があります。
申告期限を過ぎたとしても受付けてくれるんだ〜。
そうだね。
だからと言って、いつまでも申告しないとデメリットを受けてしまう可能性があるから注意だね。
住民税が確定するタイミングは自治体やその年によって若干変わりますが、おおむね5月中旬ころまでに申告すれば間に合う可能性が高いです。
5月下旬以降の申告の場合は、住民税の情報を利用する側の制度に情報が反映されるのが遅れる場合があるので注意が必要です。
自分が未申告だっていうのを知る方法って何かないのかな〜?
自治体によるけど未申告者に対して「申告されていませんよ」とお知らせしているところもあるんだよ。
未申告者に対して、申告勧奨通知を送付している自治体は多くあります。
ただし、税務署で受付けた確定申告書の情報を自治体側で整理してからになるので、自治体から申告勧奨通知が送られるのは5月以降になることが多いです。
申告勧奨通知が自治体から届いたら、自分には関係ない通知だと思わずに、早めに自治体へ確認をして申告を済ませることが重要です。
早めに通知くれたらいいのに〜って思ったけど、確定申告の情報を整理してからじゃないと送れないんだね〜。
確定申告の情報を整理しないと誰が未申告かわからないし、税務署で受付けする確定申告書も膨大な数だから時間がかかってしまうんだね。
申告するにはどうすればいいの?
住民税の申告をするには、住民税申告書を自治体へ提出する必要があります。
申告の方法は自治体によって違いますが、おおむね次のような方法で提出することになります。
⒈確定申告期間中に自治体で開いている、確定申告・住民税申告相談会場へ行き住民税申告をする
⒉自治体HPなどで公開している住民税申告書様式へ必要事項を記入し提出する
⒊住民税申告書様式を郵送してもらい、必要事項を記入し提出する
⒋自治体の住民税担当窓口へ行き住民税申告書様式を交付してもらい、必要事項を記入して提出する
S先生!
どの方法が楽なの?
どの方法も一長一短あるからなんとも言えないかな。
自治体によっては対応していない方法があるから、一度自治体へ問い合わせてみておすすめされた方法で申告するのがいいんじゃないかな。
でも、無収入の申告だけだったら、待ち時間が長い1の方法はあまりおすすめはしないけどね。
1の場合はどのくらい待たないといけないの?
自治体の対応の仕方やその日の状況によるけど、数時間待つこともあるんだよ。
無収入の申告であれば、僕だったら確定申告期間が終わってから、2〜4の方法で早めに申告するようにするかな。
最後に
S先生ありがとう!
これで友達に住民税の申告が必要だって教えてあげられるよ!
そうと決まれば「猪突猛進!」
頑張って教えてあげてね〜
いかがだったでしょうか。
住民税の場合は、収入がなかったり非課税の収入しかない場合でも、申告をしないと未申告者という扱いになり、所得が少ない人に対する減額措置や非課税世帯などに対する給付金が受けられないなどデメリットが発生することがあります。
税金の対象になる収入が無い場合は、自治体に確認をして必要があれば早めに申告をすることが大事ですね。
この記事があなたのお役に立ちますように!
それではまた。
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