幸せな結婚生活はいつまでも続いてほしいものですが、ケガや病気、事故などで家庭を支えていた方が亡くなってしまうことがあります。
そのときに残された家族が路頭に迷ってしまわないように、公的年金には遺族年金の制度が設けられています。
遺族年金の制度が、どのように改正されるのかをファイナンシャルプランナーのSが解説していきます。

誤解されがちな遺族年金の改正について、順番に解説していきますね
子のいない配偶者への遺族厚生年金の男女差の解消を目指す
現在の制度では、亡くなった方の子のいない配偶者への遺族厚生年金の給付は、男性と女性で異なる内容となっています。
今回の改正では、給付の男女差を解消することを目指すものです。
なお、今回改正された内容は、2028年の4月から施行されることになります。

今回の改正で、遺族厚生年金が改悪されちゃうのかな〜

改悪というよりは、今の社会の状況に合わせた制度の変更を目指しているよ
誤解がないように、一緒に内容を確認していこうね
なお、今回の改正は、遺族厚生年金に関するものであり、遺族基礎年金は、これまでと変わりません。
また、20代から50代の子のいる配偶者への遺族厚生年金・遺族基礎年金の給付はこれまでどおりです。
子のいない30歳未満の妻は影響なし

子のいない30歳未満の妻について、これまでの制度でも、遺族厚生年金は、5年間だけの有期給付となっています。
もともと5年間の有期給付となっている、子のいない30歳未満の妻については、制度改正後の給付期間には影響はありません。
また今回の改正は、2028年度に40歳未満の妻に支給される遺族厚生年金を、5年間の有期給付にするものです。
2028年度に40歳以上になる妻についても、今回の改正による影響はありません。

30歳未満の女性って、もともと5年間しか遺族厚生年金をもらえなかったんだね〜⁉︎

もともと5年間の有期給付だった30歳未満の妻には影響がないね
2028年度に40歳以上になる妻も、今回の改正では影響はないよ
40歳から59歳の妻は段階的に有期給付へ移行
現在は、子のいない30歳以上の妻について、これまでの遺族厚生年金制度では、給付期間は無期限となっています。
今回の改正では、有期給付となる年齢を段階的に引き上げていき、最終的に59歳までの妻は5年間の有期給付となります。
制度の改正前に遺族厚生年金を受給されている方については、改正後もこれまでどおり、遺族厚生年金が無期給付されます。

無期限でもらえてたものが、徐々に5年間の有期給付給付になっちゃうんだね

制度改正前に遺族厚生年金を受給している人は、今までどおり無期限で受給できる方向だから安心してね
60歳以上の配偶者は変更なし
60歳以上の配偶者については、もともとの制度でも男女ともに無期給付となっていました。
今回の改正でも60歳以上の配偶者については、遺族厚生年金が無期給付となっています。
これは、現役世代と比べて、60歳以上の就業率などが落ちていることへの配慮でしょう。
そのため、60歳の方で今回の改正案に不安がある方がいるかもしれませんが、今のところ心配する必要はなさそうですね。

60歳以上の人は、今までと変わらないんだね〜

現役世代と比べると就労しにくいから、そこに配慮されているんだね
有期給付拡大へのケアが検討されている
ここまでの内容だけを確認すると、男性と60歳以上の配偶者以外は、制度が改悪されているのではないかと見えてしまうかもしれません。
今回の改正によって、無期給付と比べて遺族厚生年金の受給期間が少なくなってしまうことから、大きく3点の配慮がされます。
死亡時分割で将来の配偶者の年金が増える

これまでの制度では、遺族厚生年金の受給権がある方は、無期限で給付を受けることができますが、有期給付の方は5年間給付を受けるだけで、それ以上は何もありません。
今回の改正にともない、有期給付の対象者が増えることから、死亡時分割という仕組みが実施されます。
この死亡時分割は、現行の離婚分割の仕組みを参考に、厚生年金記録を分割して遺された配偶者の年金記録に上乗せされるというものです。
これにより、夫の厚生年金記録の一部が上乗せされて、妻が老後に受け取れる年金が増えることになります。

将来受け取れる年金が増えるのは助かるね

生計を維持していた人が亡くならない場合と比べて、老後の生活が苦しくなるから配慮されたんだろうね
850万円以下の収入要件が撤廃される

これまでは、遺族厚生年金を受給できる要件に、「生計同一要件」と「収入要件」が設けられています。
そのため、これまでの制度では、配偶者の収入が850万円以上の場合には、遺族厚生年金を受給することができませんでした。
今回の改正により収入要件が撤廃され、遺族厚生年金を受給しやすくなります。
これまで収入要件に引っかかっていたために、遺族厚生年金を受給対象外だった方にとっては、朗報といえますね。

要件が減れば遺族厚生年金がもらいやすくなるね

収入要件のせいで遺族厚生年金がもらえず苦労する人がいたから、この部分は良い改正だと思うよ
給付額上乗せの仕組みを創設

これまでの遺族厚生年金は、これまで加入してきた年金記録から算出された年金額※の4分の3に相当する金額を遺族年金として受給することができました。
※厚生年金の加入月数が300か月に満たない場合には、月数を300か月として算出
この遺族厚生年金の給付に加えて、亡くなられた方が受け取るはずだった年金額の一部が上乗せされ、配偶者へ支給されます。

遺族厚生年金に上乗せで支給されるんだね~

配偶者が亡くなってすぐは、生活が一変するだろうから給付の上乗せは助かるね
まとめ
✅男女差の解消を目指して遺族厚生年金の改正が2028年から実施される
✅これまで遺族厚生年金を受給している方は影響なし
✅40歳以上60歳未満の妻の遺族厚生年金を段階的に有期給付へ移行
✅収入要件の廃止や新たな上乗せ給付で改良された部分もある
子どものいない夫婦の遺族厚生年金が、2028年から大きく変わります。
時代の変化に合わせた改正ですが、改良された部分、改悪された部分どちらもあるでしょう。
ただ、改悪となる部分も、数十年の時間をかけて段階的に移行していきます。
時代や法律の変化をしっかり把握して、変化に対応できる備えをしていきたいですね。
厚生労働省 遺族厚生年金の見直しについて⇩
コメント